ACT/3
「Point ZERO」
13番分室が岐路を迎える夜。
ポイント・ゼロ。

あの日の悪夢の逆写し。

電話のベルが鳴っている。
それは遠くから、帰還を告げる声。
……約一名にとっては、災厄を告げる声。

災厄は伝染するものだそうだ。
短い休息の時間が不意になることを恐れながら、厚木康哉は諦観する。

溜息をつくのは、大抵彼女のことで。

首をかしげるのも、大抵彼女のことで。

目のくらむような陽光を避け、そいつは蜃気楼のように現れた。
彼らの過去を知る者は限られている。
十三番分室をかつて襲った悲劇の、その内情を……
そして悪夢は訪れる。
単色の外套と、単色の闇。
真怨と人との熾烈な戦いが、また一つ刻まれる。
電話のベルが、鳴っている。
黒猫が降り立つ。
真怨に、不吉をもたらすために。
銀の刃と黒の銃。
纏うコートは同じ色。
彼と彼女の踊るダンスは、あまねく闇を討ち祓う。
不浄なるものよ、剋目せよ。
宵口に響く遠き唸り、あれは龍の声。
触れれば焼けるぞ、寄らば切れるぞ。
ここに在りしは紫電の担い手、逝き先迷わず示してくれる。

憂えよ千夜、恐れよ一夜。
金の瞳、青の血、銀の牙。右腕に隷属せし殺戮の紫龍……
五派の真怨殺しスレイヤーが一。
殺界紫電の神髄を見よ。
魂が求めるままに。
ただ速く、より高く、もっと熱く。
絶望することなかれ。
救いの光は、いつもすぐそこにある。
――夜が明ける。

 

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