ACT/2
「FRAGMENT at NIGHT」

月のない夜には、背後に闇が立っている。
怖くないのは、忘れてしまうからだ。
その赤い影のことも、昏い闇のことも。
人生は迷い多きもの。
道は人の数よりも多く、分かれ道は至るところにある。
少年の悩みは、今しばらく落ち着きそうにない。
誰にも頼らず道を行くことは、時としてとてもつらいものだ。
けれどそれは、成長には欠かせない道。
彼女は見守っている。悩む少年を、弟のように。

――骨鳴りの音を従えて

   『それ』は、かならず戻ってくる

「……面倒な事になってきたな」
ジーク=スクラッドは、いつ自分にしわ寄せが来るのかと戦々恐々であった。
厚木康哉は基本的に負けず嫌いだ。
増して、完全に見下してくるような相手がいるとなれば尚更である。
笹原志縞と、厚木康哉の第一印象は互いに、最低に近いものだった。
ネームドという形ある脅威を前に、康哉の前に僅かな不安がよぎる。
それは腕の動きを「衝撃」に変換する領域。
射程二十メートル、最大初速は音速を超える。
拳銃弾を容易に超える破壊力を持った「暴力」。
――“空撃”。エア・ボマ。
笹原志縞の、爆撃空域。
衝突。
いがみ合い。
それは、意思を持った単色の深淵。
深きものども。
昏闇の洞。
象牙色、屠殺劇場キリングステージ
蒼色、咀嚼空棺バディイーター
緋色、汚染回想ダスクイメージ

 

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