【仮面ライダーになりたかった戦闘員】

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  -第二十三話-  

突然闇に落した 悪夢のような電話








 世界はただ紅蓮で満ちている。
 憎悪と怨嗟が揺らめいているような錯覚を覚えた。
 俺たちが入るべき場所は、崩れて、原形を失い、炎を上げて燃えていた。
「……ここ、だよな」
 助手席で仲間が確認するように呟いた。その言葉は、きっと俺たちの総意だ。炎の奥に生き物の影はない。
 俺達はトラックから降り、燃え上がる建造物の前で棒立ちになった。赤々と燃え盛る炎がメットの表面を熱くする。狂ったように踊る赤い光が、立ち尽くす俺たちの影をひっきりなしにバタつかせていた。
 目の前に広がる光景が嘘だとしたら、一体何が真実だと言うのだろう。
 そう思えるまでに、はっきりと――搬入先の基地が、炎上していた。
「一体、何が……?」
 浮かんだ疑問を呟いても、答えられるやつはその場にはいなかった。
 どれくらい、そのまま立ち尽くしていたのだろうか? 
 不意に、電子音が鳴り響いて、ようやく俺は我に返った。
 メットの内側で響き渡る音に、俺たちは顔を見合わせる。周波数が自動的に調整され、緊急コールの内容を伝え始めた。俺達はそれに耳を傾ける。
『緊急事態。繰り返す、緊急事態。多くの支部、本部共にライダーによる襲撃。本部は半壊滅状態。ゴルドウォルフ――大佐、リングヴァイパー――大使、両名戦死。本部は既に放棄。現在シークレットハイウェイをDに向け移動中。
残存部隊との合流ポイントは――』
 視界が暗くなっていくような、気がする。
 合流ポイントを頭に入れさえすれば、他に聞くべき事はなかった。俺たちは弾かれたように動き出す。
 すぐに車に飛び乗り、必要のなくなってしまった物資を破棄して、ホイルスピンさせながら車を発進させた。荷物は少なければ少ないほどいい。足枷となっていた重量を全て捨てると、車両はフルスピードで疾走を始めた。

 ここに着くまで軽快な音楽を鳴らしていたスピーカーはもう、通信傍受のための雑音しか生み出さない。
 アクセルを踏み込む。鉄で出来た心臓にガソリンを急ピッチでぶち込み、法定速度を完全に無視して突っ走る。

 ――神様。
 俺はあんたを信じたことはないけど、お願いだから、お願いだから、お願いだから……!
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